これが学びたかった!
先日、こんなお問い合わせがありました。学校の先生からだったのですが、クラスの子どもが「PEERSって、どうしたら受けられるの?」という質問があったとのこと。先生が本人に詳しく話を聞いてみると、学校の図書館で『友だち作りの科学』(金剛出版)を見つけて、全て読んだらしく、「これまで、僕は、この本に書かれているようなスキルを学びたいと思っていたんだ」と伝えたそうです。約300ページある本を読みきるのは結構大変だったけど、面白かったと話したとのことでした。驚きました。2015年からPEERSを実践してきていますが、自分で見つけて、本まで読んで、これだと思ったという話は初めてのことだったからです。とても力のあるお子さんで、いろんなことに前向き、でも時折友達にからかわれることがあって悩んでいるというご報告でした。
子ども自身がスキルを学びたいと思っているかどうか、実はこれはプログラムの効果に非常に影響します。どんなことでもそうだと思いますが、学びたいという意欲がある中で新しい情報に触れると、スポンジが水を吸収するようにスーッと入っていくのです。UCLAでも、リクルートの際には、本人に参加意欲があるかどうかを確認することを重視しています。
しかし、実はこれがそれほど簡単なことではないのです。保護者から思春期の子どもに「ソーシャルスキルを学べるところがあるんだけど、行ってみる?」とストレートに投げかけると、ほとんどのお子さんが「わからない」とか「行きたくない」という返答になります。これは、プログラム自体に興味がないというのではなく、何が行われるか、どんな人たちがそこに集まるのか、どんな場所なのか、とにかくわからないことばかりなので、不安が大きくなるのです。新しいところへ行かなければならないのは不安、だから判断できなくて“行きたくない”というのが本音のようです。つまり、ASDのお子さんの特性から考えると至極当然のことですね。そこで、お子さんのニーズや発達段階に合わせて、どのように提示するか保護者と作戦を練ります。多くの場合は、イメージがつかめてくると参加に賛同してくれます。行かされた〜でなく、行くことを自分で決めること、これがプログラムに参加するスタートラインです!